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キッドおしまい

メリッサは大変無口で、ほとんど喋らないし、
質問はないかと言っても、
お腹は空いてないかと聞いてみても、
べつにいいよ、みたいなことしか言わない。
妊娠とわかるまでに、アルコールを飲んでいたり、
マリファナを吸っていたりするので、
二人はめちゃくちゃ心配したり、いろいろあったが、
とにかく二人はメリッサの赤ちゃんをもらうと決める。
しかし、このシステムは産みの親がもし、
赤ちゃんが生まれたあとに、自分で育てるといえば、
そこで終了なのである。

二人は最悪のことを考えて、
期待しつつ期待しないように頑張る。
ついに産まれるぞという連絡が来て、病院に駆けつける。
健康な美しい男の子が生まれた。
赤ちゃんの威力はやはり凄くて、
あんなにストリートに戻りたがっていたメリッサが、
明らかに微妙に変わってくる。
メリッサは犬と猫を飼っていて、
とても可愛がっているような子だから、
人間の赤ちゃんにも当然弱いんだな。
その上、テリーが初めて会った瞬間から、
もう完全に赤ちゃんに鷲掴みにされて夢中になってしまう。
ここに来てメリッサの変化に二人は怯える。
メリッサはサインしないじゃないか…

メリッサはサインした。しかし、
赤ちゃんを連れていよいよ病室を出るとき、
突然泣き崩れる。
ダンはこのときに、
オープン・アダプションの正しさを確信したと書いている。
この子が大きくなって生みの母は自分を捨てたと疑ったときに、
僕らは目の前で見たメリッサの悲しみの大きさを話してやれると。
心優しいパパ達はメリッサに負けず劣らず、
大泣きに泣きながら、
待望の赤ちゃんを連れて、お家に帰るのであった。

ダンとテリーは赤ちゃんの人種や容貌に、
なんの条件もつけようとは考えていなかったが、
皮肉にも、里親業界では垂涎の、
金髪碧眼の白人のキッドをもらい受けたのだった。

ゲイの二人がアメリカで生きていくのは、
やはり大変で、飛行機に乗れば、
赤ちゃんを誘拐したんじゃないかと疑われたり、
散々な目に遭い続けるが、
彼らのゲイやノーマルの友人達は本当に暖かいし、
二人の家族も赤ちゃんを大喜びで受け入れる。
テリーの親は遠くから古い(ボロい)ベビーベットを運んでくる。
ダンの母親は、
おじいちゃん大好き、おばあちゃん大好きとかいた、
よだれかけのセットと、
二つ買って詰め直した、
パパ大好きの二枚入りよだれかけセットを送ってくる。
まだわからないからダメだというのに、
おばあちゃん達が我慢できずに買ったベビー服は、
1mの山となる。

とにかくテリーとダンが本当に魅力的な人たちだし、
フォビアもいっぱいいるんだが、心からそうじゃない人もいて、
それを表現する丸出しぶりが、
日本と違ってさばさばと気持ちいい。
こういうのがアメリカの良いところなのかと、
アメリカ嫌いで有名な私が思ったのであった。
スイスイ読める本だが、細かいところで、
あーそうなんだ、というのが多くて、
全ては書けなかったが、
最近では最も付箋がいっぱい付いた本であった。

「キッド 」
ダン・サベージ著 大沢章子訳
みすず書房
この訳者は前に私が読んだ
「サルなりに思い出すことなど」という、
大変面白いヒヒの研究者の本を訳した人です。
訳もとてもいいと思いました。
2016年09月21日 | Comments(0) |
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